司法書士法人あさひのブログ

会社解散 4/4

  • 2022.9.17
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「少額債権者、全員に弁済できるか考えて、額を決めてほしいと言っているのね。つまり、今回の例でいうと、1000万円だよね。」

「そう。債権者の人数とか、額とか。きちんと考えてね。今回の例で1000万円すぐに弁済できなければ、債権額10万円の債権者は、通知をした方がいい。逆に債権額10万円の債権者が、2人しかいなくて、20万円であればすぐに弁済できるなら、通知はしなくていい。」

「よく分かった。ありがとう。」

「次におじさんに用意してもらわないといけない書類はわかる?」

「それがね清算人の個人の印鑑証明書ってネットで調べると載っていいるのだけど、それが解せなくて。」

「何が解せない?」

「商業登記規則第61条4項には、清算人は入ってないんだよね。受験勉強でも、清算人の就任には、その就任承諾書の印鑑につき印鑑証明書の添付は不要と何度も出てきたの。」

「うん。それは正しい知識だよ。」

「じゃーなんで、印鑑証明書を取得してもらうの?」

「61条4項の理由で印鑑証明書を法務局に提出するわけではないということは分かったよね?」

「うん。」

「例えばさ、清算中の会社は合併できる?」

「消滅会社となるのであれば合併できる。」

「そうだよね。合併するときはさ、もちろん契約書にサインするよね。」

「うん。」

「消滅会社の代表者として誰がサインする?」

「代表清算人。」

「捺印は?どんな印鑑でもいい?」

「いいえ。会社に届けている代表清算人の印鑑」

「そう。」

「清算人として、印鑑の届け出をするために印鑑証明書を提出する。」

「そっか。清算人としての会社実印の登録ということかー。」

「登記申請者としての届出印の意味もあるよ」

「了解。わかった」

「おじさんには、会社の解散登記をしても法人格が消滅するわけではないこと。解散したら清算手続に入り、その清算が終わって法人格が消滅することをしっかり話してね。」

「はい。」

「あとは、お疲れ様って。労いの言葉をかけてあげてきて」

「はい。」

「おじさんって確か、栃木だよね?」

「そう。最寄り駅は日光駅だけどそこから車でさらに30分以上かかるかな。」

「神咲家を代表して行ってくるよ。まかせて!」

翌日、私は、荷物を抱えて北千住駅のホームに立っていた。日光までは、東武線で北千住駅から日光までの乗り換え不要の特急電車がある。その電車のチケットを昨日買っておいた。時間にして約90分。関東近郊から行くには、便利な場所だ。

家族が日帰りでお出かけするには、ちょうどいい距離かもしれない。

ホームに電車が入って来た。チケットに書かれている番号の席に座る。荷物を足元に置き、一息つくと、電車が動き始めた。なんとなく窓の外をみる。しかし、景色のかわりにおじさんとの想い出が脳裏によぎる。

久しぶりに再会するのが楽しみだ。

 完