司法書士法人あさひのブログ

相続放棄 5/8

  • 2022.6.26
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週明けの1/24の夕方

 

兄が外出から戻ってきてすぐ、私は、相続放棄の書類について押印もらえたか尋ねた。

「念のため、嫌な予感がして、外出先から奥さんに連絡入れたんだよ。印鑑届けてくれたかどうか。」

「うん」

「そうしたら、週末は、仕事が入って、病院へ行けなかったというから、今日は、病院へ行かずに、戻ってきた。」

「そっか。まだ月曜日だし。で、いつ届けてくれるみたい?」

「うん。1月27日(木)の遅い時間になりそうだと」

「えーじゃー、1月28日(金)署名押印もらいに行って、その日のうちに裁判所へ郵送だね。ぎりぎりだ(;゚Д゚)」

「そうなんだよ。そして私は、金曜日は都合つかないんだ。」

 

あーそうだった。確かその日は、遺言の相談に上条先生と出かける予定だった。私も、勉強のために一緒に同席させてもらう予定だ

 

「和花」

「うん。分かってる。私が病院行けばいいのでしょ。」

「うん。ただ、絶対に一人で病室に入らない事。必ず、看護師さんとか誰かと一緒に入って。」

「えっ、なんで、お兄さん心配しすぎ。大丈夫だから」

「和花。言うことを聞きなさい。守れないなら、行かせられない。」

 

いつになく強い口調だ。どうしたんだろう。

私が行かなきゃ期限切れだよ。

 

「はい。分かった。ちゃんとお医者さんとか看護師さんとか声かけて病室に入る。」

 

「それでいい」

 

金曜日1/28

兄の強い口調が頭をよぎって不安な気持ちで、病院へ行く(念のため、病院へは、今日、13時に行く旨伝えてある)。

ナースステーションで、声をかけると主治医の先生が待っていてくれいた。

「司法書士の神咲です。あのー熊木先生ですか」話しながら名刺を渡す。

「はい。どうも熊木です」という先生は、とてもさわやかな笑顔だ。

「わざわざ、先生がすみません」

「今日は、相談放棄の書類に署名と押印をもらうために、桜木さんの面会に来ました」

「聞いております。案内しますね。」

 

「あのー、確かこの間来た男の先生。えーと、神咲圭さんでしたっけ?えっと、同じ苗字ですよね」

「わー、兄の下の名前までよく憶えてますね。お医者さんは、脳の作りが違う。」

「あー。やっぱりそうなんですね。お兄さんなんだ。憶えているのは、私の名前と一緒だったからです。しかもびっくりなのが、僕にも妹がいて」

「まさか、私と同じ名前?」

「そう。そのまさかです。」

「えー。びっくり。そんな偶然あるんですね。」

「字が多少ちがいますが。僕の妹は、『和香』って書きます。」

「妹さんもお医者さん?」

「妹は、薬剤師をしています。」

「ご兄弟で優秀なんですね。」

「ところで、桜木さんですが、だいぶ悪いのですか。その余命半年だと奥さんから伺っていますが。」

「はい。残念ながら。余命の話は、奥さんにしか伝えておりません。」

「そうですか。分かりました。」

 

桜木さんの病室についた

 

つづく