司法書士法人あさひのブログ

相続放棄 7/8

  • 2022.7.8
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その日の17時過ぎ、桜木さんの奥さんがお礼だといってやってきた。

兄と私が同席する。

「無事、裁判所へ書類お送りしました。書留で送ったので、明日には、届くと思います。」

 

「本当にありがとうございました。無理なお願い致しまして。それで、おいくらでしょう。」

 

「すでに、旦那さんからいただいてますよ。」

「えっ、いくらですか?」

「3万円」

「それじゃー足りないでしょう。不足分払います。」

 

「十分です。」と兄が答える。

 

「申し訳ない。本当にありがとうございます。」と桜木さん

「主人は、その悪い癖がございまして、そのせいで、仕事を転々としてました。主人がちょくちょく仕事を変えるものですから、生活も不安定で。気に食わないことがあると、家族には八つ当たりするものですから、子どもたちは、全く寄り付きもしませんで。」

 

「大変さしでがましいようですが」と兄が、書類を見せながら説明する。

生活保護の受給申請書のようだ。

「市役所に、申請してみたはいかがでしょうか。入院費、大変なのでは。」

「お気持ちだけでありがとうございます。もう疲れてしまったんです。以前、市役所にその件で問い合わせしたところ、難しいようなことを言われ、それ以外にもいろいろ申請したのですが、全部断られて、もう疲れてしまって。私も歳ですし。なんとか贅沢しなければやっていけます。」

「そうですか。わかりました。何か、私たちができることがあればいつでもご相談ください。」

「本当にありがとうござます。」

 

桜木さんが帰宅した。

 

今日は、なんだか疲れてしまい、早々に帰り支度をしていると、兄がやってきた。

「今日の報告は?」

「うん。熊木先生と、桜木さんの病室に行ったよ。熊木先生の名前「圭」って言うんだって。」

「うん。知っている。」

「なんだー。じゃーこれは?熊木先生には妹さんがいて、名前がなんと「ワカ」って言うんだって。字は、私の和に、香る。」

「えーそれは知らなかった。」

「すごい偶然だよね。」

 

「病室で、再度、桜木さんには、意思確認したよ。無事、署名押印もらえた」

「うん。よくがんばった。 で、報告それだけ?」

「うん。それだけ。以上」

 

「うそ。隠してる。何があった?」

「大丈夫。何もない。」そう。何もなかった。腕をつかまれただけだ。

 

「私には、分かる。ちゃんと説明して。和花は、顔に出る」

 

つづく