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税制改正合同学習会 登壇報告

2019年6月6日、
大宮ソニックシティビルにて税制改正合同学習会が行われました。

”司法書士法人あさひ”からは
長谷川直志(司法書士)が登壇し、
民事(家族)信託~基礎~の講演をいたしました。

 


民事(家族)信託  ~基礎~

(税経センターグループ)
株式会社綜合税経センター
司法書士法人あさひ
司法書士 長谷川直志

 


民事(家族)信託とは?

委託者が、信託契約、遺言、公正証書等によって、信頼できる受託者に対し、自己の不動産、金銭等の財産を移転し、受託者の財産として帰属させ、信託目的に従って、受益者のために信託財産を管理又は処分及び必要な行為すべきものをいう。

⇒ 「財産管理」 と 「財産承継」 のための制度

「委託者」
信託をする者。財産を預ける人。(主に老親)

「受託者」
預けられた財産の管理や処分を行う人。(主に子)

「受益者」
信託財産から経済的利益を受ける人。

「信託財産」
預ける財産。原則として制限はないが、積極財産のみ(債務等の消極財産は不可)。
(主に不動産、現金、未上場株式。)

「信託目的」
委託者が信託を設定することにより達成しようとしている目的。
目的が存在しない場合、信託行為は無効。

「信託行為(設定方法)」

  1. 信託契約委託者と受託者の契約。
    ※契約なので行為能力が必要。
  2. 遺言
    委託者の単独行為。
    ※委託者が死亡し、遺言が効力を発生することにより、信託も効力を生じる。
  3. 自己信託(公正証書等)
    委託者=受託者。委託者が自分自身の財産を管理する。
    ※公正証書その他の書面又は電磁的記録による。
    効力を発生させる為には、受益者に対して確定日付のある証書により
    通知を行わななければならない場合もある。

「信託の種類」(委託者、受託者、受益者の組み合わせ)

  1. 他益信託
    委託者、受託者及び受益者がそれぞれ別人格
  2. 自益信託
    委託者が受益者となる場合
  3. 自己信託
    委託者が受託者となる場合
  4. 受託者と受益者の兼任
    受託者が受益者となる場合
    ※1年間という期間の制限がある。
    (三当事者を同一人が兼ねることもできる)

民事信託の効果(メリット)

  • 委任契約 + 後見制度 + 遺言執行 の機能を 信託契約1つににまとめることが可能
  • 長期的な財産管理が可能
    委託者に代わって、親族や専門職である受託者に財産の管理を委ねることにより、
    長期にわたって受益者に対する支援が可能。
  • 利益の確実な分配
    受益者への財産給付が確実に行われる。
  • 遺言に代わる仕組みとして活用
    委託者が、自分の考えで、自分の死後の財産をどのように配分するか自由に決められる。
  • 後継ぎ遺贈型(受益者連続)として活用
    受益者の死亡により、他の者が2次受益者として受益権を取得する遺贈が可能。
    ※ただし、信託がされたときから30年経過した時以後に現に存する受益者が死亡するまで、
    又は当該受益権が消滅するまで。
  • 倒産隔離機能
    仮に、受託者が破産しても、信託財産は受託者の固有財産とは別個独立のものなので、影響を受けない。

当事者(委託者、受託者、受益者)の権利・義務

<委託者の権利>

  1. 信託事務の処理状況等の報告請求権
  2. 受託者、信託管理人、信託監督人、受益者代理人の辞任の同意権
  3. 受益者との合意による受託者、信託管理人、信託監督人、受益者代理人の解任権
  4. 遺言代用信託による受益者変更権
  5. 信託の変更の同意権
  6. 受益者との合意による信託終了権
  7. 信託終了時の法定残余財産帰属権利者

<受託者の義務>

  1. 信託事務遂行義務
  2. 善管注意義務
  3. 忠実義務(利益相反禁止、競合行為の禁止)
  4. 公平義務
  5. 分別管理義務
  6. 自己執行義務(第三者への委託も認められる場合あり)
  7. 信託事務処理状況等の報告義務

<受託者の権利>

  1. 信託財産からの費用償還
  2. 信託報酬(契約に規定がある場合)

<受益者の権利>

  1. 受益権の当然取得
  2. 権利行使の制限禁止
  3. 受益権の譲渡・質入

相続対策としての利用

<目的>

  • 節税
  • 納税資金確保
  • 「争」続・遺産分割対策

<対策>

  • 生前贈与
  • 不動産購入・建設、売却
  • 生命保険
  • 法人設立
  • 退職金
  • 養子縁組
  • 遺言書作成
  • 任意後見制度
  • 遺留分の生前放棄
  • 民事信託

民事信託を利用する際の注意点

  • 委託者の意思確認(ヒアリング、スキーム組成(長期間))
  • 受託者の選択(信認関係)
    ※信託業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、営むことができない(商事信託)。
  • 受託者の報酬
  • 監督人の必要性
  • 税制の確認
  • 推定相続人に対する遺留分の配慮
  • 任意規定の活用 ※信託法は「別段の定め」を多く認めている
  • 信託終了事由、信託終了時の財産の帰属先
  • 成年後見制度、遺言書作成の併用

民事信託の事例

  1. 高齢者の財産管理(財産保護)
    (認知症による資産凍結等のリスクを回避し、相続税の対策もしたい。)
  2. 収益不動産の管理
    (高齢になってきたので、賃貸不動産を子に管理してもらいたい。)
  3. 後継ぎ遺贈型の受益者連続信託
    (後妻が亡くなった後は、前妻との子に財産を遺したい。)
  4. 福祉型信託
    (親が亡くなった後も障害のある子の生活を守りたい。)
  5. 「争」族・遺産分割対策
    (相続発生時に揉めないように事前に合意したい。)
  6. 自己信託
    (自分が元気なうちは、自ら財産を管理したい。)
  7. 死後事務委任
    (葬儀、納骨を希望通りに行ってほしい。)
  8. ペット
    (ペットの面倒を見てもらいたい。)
  9. 事業承継
    (認知症による会社運営不能になるリスク回避し、併せてスムーズな経営権の承継をしたい。)
  10. 不動産の活用と相続税対策
    (土地を所有しているが、高齢なので自分では借金をせずに相続税対策(建物建築)をしたい。)

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