前回は、種類株式のうち下記⑧の説明をしました。
今回は、⑨役員選任権付種類株式に関する規定について話をしたいと思います。
【種類株式の内容】
①剰余金の配当規定
②残余財産の分配規定
③株主総会の議決権制限規定
④譲渡制限株式に関する規定
⑤取得請求権付株式に関する規定
⑥取得条項付株式に関する規定
⑦全部取得条項付株式に関する規定
⑧拒否権付株式に関する規定~黄金株~
⑨役員選任権規定
≪役員選任権付種類株式とは≫
当該種類株主総会で役員を選任することができる種類株式です。
ざっくりいうと、この種類の株式を持っている株主だけで役員を選任できます。
【注意点】
- 公開会社(株式譲渡制限に関する規定を設定していない会社)は、発行することができない。
- 指名委員会等設置会社は、発行することができない。
- 役員選任権付種類株式は、取締役と監査役のみを対象としているため、会計監査人、会計参与、代表取締役を対象とする選任権付種類株式を発行することはできない。
- この種類株式を発行した場合は、取締役、監査役の全員が、種類株主総会で選任される。
一部のみ種類株主総会での定めを設け、残りは、全体の株主総会で選任する旨を定めることはできない。
上記役員選任権付種類株式によって選任された取締役・監査役の解任は、原則として、当該 種類株主総会決議で解任します。
しかし例外として、下記①または②のときは、通常の株主総会決議で解任できます。
- ① 定款で通常の株主総会で解任できる旨を定めた時。
- ② 当該取締役・監査役の任期満了前に当該種類株主総会で議決権を行使することができる株主が存在しないとき(当該種類株式全てが自己株式になった場合等)
【定款記載例】
- 甲種類株式を有する株主は、甲種類株主総会において取締役2名を選任できる。
- 乙種類株式を有する株主は、乙種類株主総会において取締役1名を選任できる。
- 丙種類株式を有する株主は、丙種類株主総会において取締役を選任できない。
活用例としては、会社内部に派閥が生じている場合に、各株主がそれぞれ取締役、監査役の一部を選任することができ、個々の派閥から役員を送りだすことができる。
役員選任権付種類株式は、他にも注意点がありますので、自己の判断で安易に導入することは危険です。
専門家に相談し、慎重に検討する必要があります。