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新しい優しさのかたち ~家族のために今できること~Part 4

新しい優しさのかたち ~家族のために今できること~Part 4

今回は、以前お話しした家族信託の事例をもとに書きたいと思います。

【家族構成】

父(78歳)
母(他界)
長男(45歳)
長女(42歳)

【父の財産】

  • 自宅の土地・建物
  • 預貯金
  • 商売関係の財産

父 :仕事をリタイアし、最近物忘れが多くなっていると感じている。
長男:父親の後を継いで家業を営んでいる。実家近くに家を購入し妻と一人息子の3人暮らし
長女:家を出て家庭を築いている。夫と二人の娘と4人暮らし

【父の希望】

父は、子供に迷惑をかけたくないと思っており、もし自分が認知症になった場合は、施設に入居するつもりでいます。施設の入居費用については、自宅の土地・建物を売却し、捻出したいと考えています。
また、万が一死亡したときは、商売関係の財産は、自分の後を継いで仕事をしてくれている長男に、預貯金は、長女に相続させたいと思っています。
財産の管理については、他人が介入することは避けたいという考えです。

 

今の状態で、もし父が認知症になってしまった場合、本人はもちろん子供たちも不動産を売却する手続きをすることができません。なぜなら意思能力がないと、自ら法律行為をすることができないからです。

上記のケースの対処法としては、「遺言」+「家族信託」の併用型が考えらえます。
遺言で、預貯金と商売関係の財産の行方を決め、自宅の不動産のみ信託するという方法です。

信託の具体的内容は
委託者-父 (財産を委託する人)
受託者-長男(財産管理する人)
受益者-父 (財産から生じる利益を受け取る人)  
信託財産:自宅の土地・建物
信託目的:受益者の安定した生活及び福祉を確保すること

上記内容の信託目的を定め、父と長男で信託契約を結びます。こうすることで、受託者である長男が父の自宅不動産の管理処分を任されることになり父が認知症になった場合、裁判所の介入なく売却手続きを進めることができます。
売却した後の代金も信託財産として、受託者である長男が信託目的の定めに従って、父の施設費用等に使い、長男が信託目的の定めに従って父のために、財産の適切な管理をしていくことになります。
長男が商売している関係上、適切な管理がおろそかになる可能性を想定し、長女を信託監督人に選任することもできます。信託監督人とは、この事例では、長男が父親のためにする財産の管理を長女が監督するということです。

 

家族信託は、信頼できる家族に大切な財産を託し管理してもらうものです。
家族の中で完結するため信頼関係は欠かせません。家族の絆が試されるといっても過言ではありません。
自分の財産を任せられる家族がいるのであれば、柔軟な信託設計ができる上に、その行方を後世まで決めることもできます。
認知症になった後のことなど考えたくないかもしれません。それでも、人生100年。長生きする上でのリスクも考えた対策をする時代になってきました。今後のことを家族で話し合ってみませんか。

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